香港時間 - Hong Kong Time -

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映画「梅艶芳(アニタ)」を観た

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新型コロナの第五波が沈静化し、4月21日から映画館が再開したので、先日、香港映画「梅艶芳(アニタ)」を観に行ってきた。評判通りの作品で、泣けた。

 

 

この映画は、昨秋上映されるや香港人の間で人気沸騰。映画好きの香港人の友人も絶賛していたので観たいと思っていたが、観ないうちにコロナ禍で映画館が休館に。諦めていたけど、規制緩和で再開すると、まだ上映する映画館が僅かにあってラッキーだった。

 

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(Disneyプラスではダイレクターズカットを上映中)


映画の主人公、アニタ・ムイは言わずと知れた香港の大スター。1980年代、90年代を中心に活躍していたが2003年12月に子宮頸がんのため40歳の若さで旅立った。

 

映画は、幼少期に姉と一緒に舞台に立って歌っている場面から始まる。(以下ネタバレになるのでご注意を)

 

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(下町の茶餐店(大衆食堂)に掲げられたアニタレスリーが共演した映画のポスター)


幼い頃は誕生日にケーキを買うお金がないほど貧しかったが、沢山の言語で歌が歌えれば世界が広がるというアドバイスを聞き、持ち前の歌唱力だけでなく、日本語の歌など多言語で歌を熱唱。ステージを盛り上げファンを魅了して、スターダムにのし上がった。


マッチこと、近藤真彦との恋の噂は香港では有名だが、映画では、後藤夕輝という名前の日本人歌手が登場し、恋愛模様が描かれた。映画では、日本に頻繁に行って愛を育んでいたけど、結局2人はそれぞれのスターのキャリアを選ぶことになる。(ちなみに、マッチは香港でも人気があった)


映画では、マフィアとのトラブル、社会貢献活動に取り組む姿、レスリー・チャンとの友情なども描かれて、短くも情熱と波乱に満ちた生涯が、数々のヒット曲とともに浮き彫りされた。

 

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(下町の茶餐店(大衆食堂)の店頭に掲げられたアニタレスリーが共演した映画のポスター。店内もオールド香港風)


そのレスリーは、SARS(重症急性呼吸器症候群)が香港で感染拡大中だった2003年4月1日にマンダリンホテルから飛び降り自殺。映画では多くの市民が悲しむ当時の映像を使っていた。(当時がリアルに思い出されて切なかった) そして、盟友の死を悲しんだ彼女も、レスリーを追うように約8ヶ月後の12月に旅立った。

 

当時、彼女はガンであることを公表して、最後のコンサートをホンハム体育館で行うことを発表。ウエディングドレス姿でステージに上がったのは伝説になっている。

 

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(映画館再開のお知らせ付きの、映画「梅艶芳(アニタ)」のポスター


映画には、街も人間模様も、古き良き香港がぎっしり詰まっていた。姉妹愛と、彼女の孤独も描かれていた。改めて、時代を駆け抜けたすごい女性だったんだなと思った。