香港時間 - Hong Kong Time -

香港の今を、日常から、写真と文で読み解きます

「来月英国に移民します」

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2021年4月14日。先日、「ご飯を食べよう」と声をかけてくれた香港人の友人と食事をした。「久しぶり~。元気だった?」と聞く私に、「うん。でも会うのは今日が最後かも。来月イギリスに移民するの」と、笑いながらこう切り出された。

 

「ええ?そうなの?」

 

前回会ったのは、去年の6月。あの時、社会の不満をいろいろ口にしていたけど、移民という言葉は出てきていなかったような。あるいは、冗談ぽく笑い飛ばしながら「移民したい」と言っていたかもしれない。でも、私はその時は、一年も経たずに彼女が香港を去ることになるとは、想像すらしなかった。

 

ご飯を食べつつ、あれこれ話した。

 

移民を考え始めたのは、2019年10月ごろ。反政府デモの破壊行為が一層エスカレートしてきたころだった。彼女は民主派市民の一人だが、政府が大嫌いだから香港を去る、とかではない。「こういう社会に嫌気がさした」のだ。こういう社会とは、民主派と親中派が争いあって、修復不能なほど大きく亀裂した社会だ。2020年に入って法治もなくなったと感じる。そしてやっぱり、「子供の教育や将来を考えて」との決断だった。ご主人も同じで、どちらかが先に言い出したというのではなく、二人とも同じ考えや思いだったという。

 

夫婦の意思は固まった。

 

9月になって、母親(80代)に移民の意思を打ち明け、一緒に英国に行こうと打診した。母親はしばらく考え、ともに移民すると答えを出した。母は香港生まれだ。日本が大好きな息子(中2)にも聞いた。「日本に行く?英国に行く?」と。息子は「日本は旅行でいい。英語が通じる英国に行く」と答えた。

 

友人はネットで情報を収集。学校を探し、コンタクトをとり、息子は昨年12月にオンラインで英語、数学などの試験を受け、今年1月に合格通知を受け取った。学校は決まった。

 

先週、夫婦そろって、各自の会社を退社した。来月の出発までは、引っ越しのための最終準備が始まった。

 

移民先は英国南部だ。ロンドンはコストが高くて無理。それに南部なら、気候的にも合いそうだからだ。英国には、家族だれも行ったことはない。しかし英国は、中国返還前に生まれた香港住民が持つことができたBNO(海外在住英国民旅券)保有者に対して、5年間の居住を認める制度を発表した。(BNOは、以前は渡航用だけで、英国居住は認められなかった)さらに1年延長すれば、永住権がもらえるという。他の移民先のように、犯罪履歴証明を提出する必要もないのだという(この家族が犯罪歴があるということではない。移民受け入れが他国・地域よりも緩いということ)。しかも香港からの移民に対しては、生活支援金も支給されるのだそうだ。今の英国は移民志向の香港人にとっては、渡りに船のような状況といえる。

 

頼れる友人を頼って英国に行くというのではなく、ゼロからスタートで臨む。それでも軽々と移民していくのは、経済的な余裕もあるからだろう。約250万香港ドル(約3500万円)で買った家は780万香港ドル(約1億1000万円)で売れたというから、当面、資金で困ることはない。

 

新たな方向に向けてサバサバしている、レスリー・チャンが大好きな彼女にこんな質問をしてみた。「2年後はレスリーが亡くなって20年。10年の時以上に大々的な追悼イベントがあると思うけど、どうするの?香港に戻ってくるの?」と。彼女から返ってきたのは、「わからないわ。すべてはその時の状況次第。英国でもイベントはあるでしょう」。今は英国での新生活の構築に向けてまっしぐらで、将来的に香港に戻ることなど毛頭考えていないようだった。

 

香港を離れる前に、もう一度一緒にご飯を食べようと約束して別れた。