香港時間 - Hong Kong Time -

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「愛国者による香港統治」の立法会選挙

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フェリーのふ頭に掲げられた立法会選挙の巨大案内広告

 

12月19日、「国家安全維持法」が施行されてから初の立法会(議会)選挙が行われた。この選挙、今年5月に中国政府主導で、「愛国者」しか立候補を認めない選挙制度に変わったことから、親中派政党からの立候補者同士の争いといった構図で、153人が立候補して90議席を争った。独立派や自称民主派もいるが、ごくわずか。新制度で議会議員は、20議席増えて、これまでの70議席から90議席になったが、直接選挙で選ぶ議員は35議席から20議席に減っているから、議会で民意が反映しにくくなってもいる。

 

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今、開票していて集計の様子をテレビで放送しているけど、これまでと立候補者の顔ぶれがかなり違うので、候補者の写真を見ていても、親中派の重鎮以外はさっぱりわからない。

 

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もともと今回の選挙は昨年9月に予定されていて、民主派が初めて過半数を獲得する可能性もあったが、政府は新型コロナを理由に延期。その間に「愛国者による香港統治」の選挙制度に塗り替えられ、民主派勢力の議会での活躍の場は封じこまれたとあって、「投票しても意味がない」と考えている民主派市民は少なくなかった。

 

案の定、前回の選挙で58.28%だった投票率は今回は29.28%。今朝、親中派の重鎮は、「投票率が30%ぐらい(に下がって)でも、十分成功」的なことを言っていたけど、結局、3割にも届かなかった。

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(Now TVから、12月20日午前0:15現在)

(追記:20日の朝のニュースでは最終的な投票率は30.2%となっていた。20日付明報も29.28%の数字を19日午後9時30分現在として引用して記事を書いているから、最終的な数字が発表されたのは相当遅くなってからのもよう)

 

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(ビルにも投票をよびかける電光広告)

 

それにしても、今回の選挙は、投票をよびかける広告がすごかった。バスもバス停も、地下鉄駅構内もフェリー乗り場もトラム乗り場も、「香港と自身のために1票を投じよう」という広告のすごいことと言ったらなかった。テレビでは、投票所での投票の仕方まで事細かに解説までしていた。今回は、中国本土にいる香港人有権者のために、3か所の税関で投票を受け付けるということまでしている。

 

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(バスもバス停も、投票呼びかけ広告がすごい)

 

で、バスや地下鉄は終日無料にしていた。投票所に足を運んでもらいやすいようにとのことだけど、投票所って普通、家の近所だから、歩いていける範囲なんだけど。却って、投票しようか迷っていた人は、天気もいいし、どこかに出かけようっていう気分になっちゃうと思うけど。政府は何を考えているんだろう?そう思っていたら、やっぱり、みんなただ乗りできるからバスも地下鉄も大混雑。テレビで市民は、「まるで平日の出勤並みの混雑ぶり」「投票は家の近所。飲茶をしにでかけるわ」「公共交通機関を無料にするのと投票は無関係でしょ」と語っていた。

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(無料が表示されている地下鉄の改札口)

 

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(地下鉄駅構内にも投票をよびかける電光広告)

 

さて、新たな選挙制度だが、投票所はどうだったか?

投票所の入り口では、初めて、老人や障害のある人など「特別市民」と「一般市民」と列を分けて並ばせ、「特別市民」を優先的に会場に入れていた。会場では、これまでは香港IDの番号に沿って受付が分かれていたが、今回は、空いている受付に行くように変わっていた。で、前回までは、香港IDを見せると、係員が紙に印字されている有権者リストの中から該当者を選んでチェックしていたが、今回はコンピューターでチェック。そして、受付に設置したタブレットに香港IDと名前が表示され、身元確認を求められる。そして、投票したい立候補者枠に押すスタンプと、A4サイズの投票用紙がセットされた投票板を渡された(これはこれまでと同じ)。板から投票用紙を外して投票箱に入れる時は、これまでは二つ折りにしていたけど、今回は二つ折りにせず、そのまま入れるように変わっていた。

 

テレビでは選挙速報を放送しているけど、開票数は明らかにしておらず、「当選機会大」「当選五分五分」「当選機会小」の3つしか表示していない。12月20日の朝には結果が判明しているだろう。

 

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(ビルにも投票をよびかける電光広告)

 

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(選挙案内広告)

 

それにしても、この凄まじい広告の量。香港政府は一体いくら注ぎ込んだのだろう?

 

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(ハーバートンネル入り口にも巨大選挙広告)