(2)国安法と報道の自由の狭間でー朝の新聞販売店ー
6月17日に大衆紙「アップルデイリー」の幹部5人が「香港国家安全維持法(国安法)」違反容疑で逮捕された事件。報道の自由を揺るがす大事件に市民や社会はどう反応しているのか? 日々のニュースや、実際に見聞きしたものをシリーズで記録していく。
ーー事件翌日の朝の新聞販売店はーー
6月18日朝、新聞販売店は行列ができていた。その前に山積みになった「アップルデイリー」がドカンと置かれ、次々と買い求められていく。中には、3部、5部とまとめ買いしていく人も。去年の8月に、「アップルデイリー」の創業者、ジミー・ライ氏が逮捕された翌日と同じような光景だ。前回は55万部を発行した。今回は50万部だ。編集幹部が逮捕され、パソコンなどが押収され、発行できるのか?と思ったが、前日に「50万部を発行する」と宣言した通り、新聞は店頭に並んだ。
朝、会社の同僚が、「新聞はどこで買ってるの?」と聞いてきた。彼はオフィス近くで新聞紙を買ったことがないらしい。というか、日頃ネットでしかニュースを見ないようで、紙媒体は全く買わないらしい。「オフィス近くのコンビニは定価のHKD10だけど、駅前の販売店はHKD9だよ」と教えると、早速駅前に買いに行った。「まだあった」と言いながら、「アップルデイリー」を手に戻ってきた。
「報道の自由を脅かす行為に抗議の意を示したい」というのが同僚君の新聞購入理由だ。「白紙でも買う」と言った声もあり、「アップルデイリー」への声援と、政府への抗議という、人々の想いが入り混じった朝の光景だった。