香港時間 - Hong Kong Time -

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(8)国安法と報道の自由の狭間でー廃刊翌日の他紙

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6月17日に、中国に対して批判的な大衆紙「アップルデイリー」 の幹部5人が「香港国家安全維持法(国安法)」違反容疑で逮捕さ れた事件。報道の自由を揺るがす大事件に市民や社会はどう反応し ているのか? 日々のニュースや、実際に見聞きしたものをシリーズで記録してい く。(冒頭の写真は、6月25日付「信報」)

 

 

今回のテーマ:「アップルデイリー」廃刊翌日の他紙から

 

各紙、多くの市民が最後の「アップルデイリー」を購入する様子を伝える一方、アップルデイリーの消滅が鬼退治に成功したかのような評論も随所にあった。そんな中で、私は以下3つに注目した。

 

・宿敵「アップルデイリー」が消えた東方日報は

・「明報」と「信報」、「産経新聞」の記事話題に

・ジミー・ライ氏に関する書籍、多くの公共図書館で閲覧不能

 

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・宿敵「アップルデイリー」が消えた東方日報は

 

ライバル紙が消えて、やっぱり嬉しいんだろうな、と思う記事構成だった。1ページ使って、ジミー・ライの子息が刑務所に面会に出向く様子や、市民が「アップルデイリー」を発行していたネクストデジタル社ビルの前で、同紙を燃やす様子や、中国政府が日英政府が報道や言論の自由に憂慮していると発表したことに「内政干渉だ」とコメントしたことなど、細かい記事をいくつも載せていた。

 が、前日の香港で一番の出来事だった、多くの市民が「アップルデイリー」を購入するために長蛇の列を作ったニュースはカケラもなかった。こんなに偏りがあっていいのかな?

 これまで香港で1日の発行部数は1995年に東方日報が打ち立てた83万部が最高だった。それを宿敵「アップルデイリー」に100万部に塗り替えられてしまい、よっぽど悔しかったんだろうな。今や新聞も電子化され紙媒体は減る一方だから、再度記録を更新するのは相当難しいだろう。

 

 

・「明報」と「信報」、「産経新聞」の記事話題に

 

「明報」と「信報」と言ったら中産階級が好む新聞。(「信報」は政治経済ニュース中心で金融関係者がよく読む新聞)  その両紙が、24日付産経新聞の写真付きで、同紙がいかに日本で「アップルデイリー」の廃刊について伝えたかを紹介していた。

 その産経新聞の記事。中国語で見出しをとっていたのに驚いた。私は普段中国語を見ているから字面を普通に追えたが、日本の読者は、ビックリしたのではないだろうか。でも、黒地で白抜きの部分の記事を読んで、ジンときた。あれは読者に向けた記事というより、「アップルデイリー」や香港人に向けた手紙だ。そう思うぐらいのメッセージ性があった。香港でもかなり話題になった。特に「明報」は記者名まで書いていた。もちろん、並行して中国政府の批判コメントも書いていたけど。

 これとは別に、今回の「アップルデイリー」の一連の事件を、日本のメディアが逐次、大々的にニュースで取り上げていたことを香港では(というか私の周りで?)いい意味で結構驚いていた。

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(6月25日付「明報」より)

 

 

・ジミー・ライ氏を題材にした書籍、多くの公共図書館で閲覧不能

 

やっぱり出てきた。「アップルデイリー」の創業者ジミー・ライ氏に関する書籍を多くの公共図書館が閲覧不能にしたそうだ。親中派議員が、ある図書館の館長オススメコーナーがジミー・ライ氏に関する書籍シリーズになっていたのを問題視。それを受けてか、多くの公共図書館で、閲覧不能にしたらしい。黃之鋒(ジョシュア・ウォン)の書籍もすでに閲覧不能になっている。

 

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(6月25日付「信報」より)