香港時間 - Hong Kong Time -

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(4)国安法と報道の自由の狭間でー迫るアップルX DAYー

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6月17日に、中国に対して批判的な大衆紙「アップルデイリー」の幹部5人が「香港国家安全維持法(国安法)」違反容疑で逮捕された事件。報道の自由を揺るがす大事件に市民や社会はどう反応しているのか? 日々のニュースや、実際に見聞きしたものをシリーズで記録していく。(冒頭の写真は、最終回となった「アップルデイリー報道」から)

 

今回のテーマ:

「アップルデイリー」に迫るXデー

 

当局によって7つの銀行口座、約1800万香港ドル(約2億6000万円)が凍結され、まさに兵糧攻め状態の「アップルデイリー」。この資金凍結が解除されない場合、約1000人の従業員への給料が支払えない。香港は、就業規則で定めた毎月の締め日から7日以内に給料を支給することが香港の労働法で義務付けられている。7日以上過ぎると違法行為として罰せられる。

 

21日午前中には、26日が最後の新聞発行日になるかもというニュースが流れたが、この日すでに多くの社員が退社したため、夜には、23日には新聞発行もネット配信も終了する見通しとのニュースが流れ出した。いずれにしろ、この流れだとあと数日。

 

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(CATVのネットニュースから)

 

毎晩9時30分から動画でニュースを放映している「アップルデイリー報道」は、最後にキャスターが「今日は最終回です」と告げ、260日もの夜間に配信できたことや、視聴者への感謝などを伝えて終えた。その後、ネットで経済ニュースを伝える「アップルデイリー財経網」も深夜に更新を停止した。


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(「アップルデイリー報道」ネットでは市民の感謝や惜しむ声が)

 

「アップルデイリー」は、20日に創刊26周年を迎えたばかり。7月1日を待たずに、一気にXデーが近づいている雰囲気だ。政府による発行停止処分ではなく、企業の経営難による発行停止という、“自社決定”の体裁となる。こういう風に誘導していくあたりが、中国および香港の政府はお見事というか、実に狡猾。

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(6月21日付「アップルデイリー」)

 

「アップルデイリー」は、二年前の反政府デモから、それまで以上に民主派市民支持の旗幟を鮮明にしてセンセーショナルに走り、読者を煽る部分もあったと思う。ただ、国安法違反が疑われた問題の記事とはどれだったのだろうか?

 

どうせなら最後の新聞は、過去26年の中での、「アップルデイリー」らしい輝かしくも誇れる記事の特集にして欲しい。