香港時間 - Hong Kong Time -

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(3)国安法と報道の自由の狭間でー主要各紙の社説ー

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6月17日に大衆紙「アップルデイリー」の幹部5人が「香港国家安全維持法(国安法)」違反容疑で逮捕された事件。報道の自由を揺るがす大事件に市民や社会はどう反応しているのか? 日々のニュースや、実際に見聞きしたものをシリーズで記録していく。(冒頭の写真は「アップルデイリー」の社説)

 

今回は、事件翌日、6月18日の主要各紙の社説。

 

同業他社は今回の事件をどう見るのか? 気になったので「アップルデイリー」など6紙にザッと目を通した。

 

気づいたことは2つ。

●「アップルデイリー」を擁護する内容は1紙もなかったこと。

●「明報」の社説は、全く別のテーマだったこと。

 

実は私が一番読みたかったのは、「明報」の社説だった。が、期待した「アップルデイリー」の事件ではなく、米ロ首脳会談に関するものだった。

 

 

反政府デモで、警察が放ったゴム弾が少女の目にあたり失明したとのセンセーショナルな記事をきっかけに市民の警察への反感や暴力行為はエスカレートしていった。この急先鋒が「アップルデイリー」の記事だった。しかし最近、この女性は失明しておらず、昨年香港を離れて台湾に向かっていたことがわかった。そんなことを具体例にあげる社説もあった。(ちなみに、少女の目に当たったのはゴム弾ではなく、デモ隊が放ったパチンコ玉が誤って当たってしまった、という説もある)

 

以下、社説の一部をザックリと。

 

【アップルデイリー】

「アップルデイリー」は2日後(6月20日)の26歳の誕生日(創刊記念日)を前に、災難が発生した。昨日(6月17日)、500人の警官に本社ビルを封鎖され、6時間近くに及ぶ捜査で、ニュース資料や、少なくとも44台のコンピューターを押収された。幹部5名が逮捕され、3社の資産も凍結された。理由は外国の組織などに対し、香港と中国への制裁や敵対的行動を求め「香港版国家安全法」に違反した容疑だ。

当局は、同業者に我々とは距離を置くよう忠告し、我々にも行動に注意するよう警告した。 「アップルデイリー」も、香港の報道の自由も、危機に瀕している。

1年も経たずに当局から2回も標的にされ、新聞発行への影響は避けられない。 しかし、我々は、当局から抑圧を受ける一方で、読者もいる。 これまで報道の自由言論の自由を享受していた香港市民は、これらの権利を簡単に放棄できるのだろうか。「アップルデイリー」への愛憎を簡単に放棄できるのだろうか。

大規模捜査には震えたが、読者から応援メッセージをもらった。応援ありがとう。我々は、各々の仕事に忠実に夜明けが訪れるまで戦い続ける。

 

 

【大公報】

国家の安全保障を維持するための今回の警察の行動は、香港社会から確固たる支持を受けている。社会の混乱を狙う香港内外の勢力は「報道の自由」と称して、警察が「報道の自由」を抑圧しているというが、根拠のない非難だ。基本法は、香港居民の言論、報道、出版の自由を保証しているが、国家安全保障の最低ラインを超えてはならない。

警察の法執行の根拠や、逮捕者の犯罪に言及せずに、警察の「権力乱用」のイメージを造成し、市民を誤解させ、国際世論を味方につけようとした。f:id:hongkong2019:20210620220529j:image

 

【文匯報】

「アップルデイリー」は、外国勢力と繋がる人物のもとで、中央政府と香港政府の信用を失墜させ、偏見と虚偽の情報で市民に政府への憎悪を広め、国家と香港を危険にさらすよう扇動した。国安法および関連法に違反した者は、職業上の地位や経歴に関係なく、法律によって厳しく罰せられる。 「アップルデイリー」とその関係者は、ジャーナリズムを傘として、国家を危険にさらし、香港と市民を傷つけた。法の裁きは避けられない。

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【星島日報】

2014年の雨傘運動から2019年の反政府運動まで、ジミー・ライ氏と「アップルデイリー」が果たした政治的役割は明確だ。彼は米国の政治指導者に会うために何度も渡米し、特別な待遇を受けた。また、中国と香港に制裁を課し、北京に圧力をかけるように西側諸国に呼びかけた。反政府デモ中、「アップルデイリー」の一部の報道は、事実と矛盾するセンセーショナルな伝え方をしていた。「時代の革命」というスローガンを扇動し、外国が中国を制裁すべきだとの世論を作りあげた。ライ氏の政治的陰謀のために、「国安法」施行後も違法行為を続けた「アップルデイリー」の行為はジャーナリズムとは何ら関係がない。同じメディアやジャーナリストとして、「アップルデイリー」が捜査されるのは辛いが、ライ氏は新聞という公器を私的に利用し、メディアを変質させた。報道は報道に徹し、政治は政治に任せる。これこそが真のジャーナリズムだ。

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【東方日報】

反中のために香港を混乱させ、権力を掌握するために外国勢力と共謀してきたネクスト・メディア社と「アップルデイリー」は昨日、致命的な打撃を受けた。国安法施行後も故意に罪を犯し、法治に挑戦し続けた。報道の自由を装って、法の抜け穴を恣意的に悪用した。資産1800万香港ドル(約2億6000万円)と7つの銀行口座が凍結された。同社株も取引停止になった。資金とマンパワーが足りずどうやって新聞を発行できるのか? 香港の中国返還以降、ジミー・ライ氏は香港での反中の最前線に立ち、黒金を使って反中の政治家を多数育て、「アップルデイリー」を使って反中の世論を作り上げてきた。「アップルデイリー」は閉鎖され、すべてが報告される時がくる。米国のために戦うなど、夢に過ぎない。

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