香港時間 - Hong Kong Time -

香港の今を、日常から、写真と文で読み解きます

対照的だった中国本土と香港の連休

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10月5日からの3連休を利用して、高速鉄道に乗って中国福建省の首都・福州市を旅行してきた(7日は香港は「重陽節(墓参り)」の祝日)。前日の4日は、林鄭月娥・行政長官が強権を発動して、顔をマスクなどで覆うことを禁じる「覆面禁止法」を施行すると発表したことに反発したデモ隊が、案の定、日付を超えて5日未明まで大暴れ。地下鉄MTR駅はことごとく破壊され、5日は全駅閉鎖に追い込まれた。が、幸い高速鉄道がある西九龍駅だけは破壊されずに済んだので、予定通り香港から福州まで行くことができたのだ。

 

折しもこの3日間は、中国本土の国慶節(建国記念日)の大型連休(10月1日‐10月7日)と重なった。そんなこともあって、香港とは対照的なお祝いムードの中を観光することになった。

 

高速鉄道は、2018年9月23日に香港‐中国本土が結ばれ、香港と本土を行き来する新たな移動手段に加わった。私は、西九龍駅を出発し、途中、深圳北で福州南行きに乗り換えた。予想はできたけど、西九龍駅構内はガラガラ。深圳北行きの列車も、早朝(7:20発)とはいえ、私が乗った車両は、65座席に対して乗客は4人だけ。一方で、深圳北駅構内は、国内のどこかに向かう列車を待つ客で溢れている。もちろん、深圳北駅から福州南駅に向かう列車も、満席状態だった。

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(香港と中国本土を結ぶ高速鉄道の開通で、陸路での移動が格段と便利になった)

 

例年なら国慶節の大型連休中は、本土から多くの観光客が香港を訪れる。しかし今年は、過激化する抗議デモやら、人民元の対香港ドル安やらで、香港での観光も買い物も、本土客にとって全くうまみがない。香港は避けて国内旅行に出かける中国人が多かったことは明らかだ。

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(10月4日、デモを恐れて早々と店じまいした宝飾店。国慶節休暇は超かきいれ時だが−−。)

 

深圳北駅も福州南駅も、駅構内は大小様々な五星紅旗が掲げられ、建国70周年を祝うスローガンがあちこちにあった。福州市内も同様で、至るところに旗・旗・旗。スローガン、スローガン、スローガン。が、それよりも驚いたのが、想像以上に都会で、街が整然としてきれいだったこと。そしてゴミがひとつも落ちていない。道路沿いの公衆トイレも管理人がいてきれいだった(「清潔ですね」と言ったら、満面の笑みが返ってきた) 。福州一の観光地、「三坊七巷」は、古い街並みを見事に再生させて観光客の誘致に成功していた。この街の経済発展に勢いを感じ、観光客や市民にも余裕の表情を感じた。なにより、70周年を祝う飾りの前で、順番を争って記念写真を撮る観光客の姿が印象的だった。

 

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福州市の中心部・八一七路

 

一方の香港。抗議デモがエスカレートする中で街はどんどん荒廃し、汚くなっている。自由や民主への希望や、政府への不満などを書き込んだメッセージなどが貼られた「レノンの壁」は、当初は輝いていた。しかし、反対派によってそれらが、無造作にはがされる。するとまたその上から、新たなメッセージを貼り付ける。このイタチゴッコのような繰り返しの中で、壁はぼろぼろだ。道路も黒スプレーでスローガンなどが書きなぐられている。地下鉄MTRの駅入り口のガラスは破壊され、シートで覆われる有り様だ。路上の鉄柵は根こそぎ抜かれ、柵代わりにオレンジのテープが張られて痛々しい。街全体が悲鳴をあげ、出口が見えない香港社会を象徴しているかのようだ。

 

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メッセージやポスターが無造作にはがされて、汚い壁。この上にまた新たなメッセージやポスターが貼り付けられる。

 

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(西湖公園で、五星紅旗と共に記念写真を撮る中国人。これが香港となると、国旗はデモ隊によって燃やされたり、踏まれたり、海に投げ捨てられたりすることも)

 

いずれの姿も今の中国だ。同じ民族でありながら、異なる歴史を歩んできた中国本土と香港。旅先で目にした数々の光景に、やはり文化の違いの溝は大きいと感じぜずにはいられなかった。