香港時間 - Hong Kong Time -

香港の今を、日常から、写真と文で読み解きます

デモ隊接近でスタバはー

f:id:hongkong2019:20191013020620j:image

 

「デモ隊がこっちに向かっているので、お店を閉めます。すみませんが、すぐにお店を出てください」

 

今日(10月12日)午後3時ごろ。九龍半島・モンコックの「スターバックス」で一休みしていたら、店員が席にやってきてこう言う。彼はテーブルを一つ一つ回って全員に、同じ説明していた。昼間の営業時間中に「店を出て」と言われるのは、初めてだが、事情は理解できるので、運が悪かったと思って出るしかなかった。

 

店員によると、(抗議活動の際にマスクなどで顔を覆うことを禁じる)「覆面禁止法」の施行に抗議するデモ隊が、午後1時にチムシャツイに集まり、モンコックを通って、シャムスイポー方面に向かって歩き出した。そこで、スタバとしては、デモ隊が近くにやって来る前に店じまいをして被害を避けようと決めたわけだ。


f:id:hongkong2019:20191013025651j:image
(ネーザンロードをシャムスイポー方面に向かって歩く市民ら)

 

スタバがこれほどデモ隊の行動にピリピリするのにはわけがある。すでに何店舗も攻撃されているからだ。スタバは米国の企業だが、香港では、香港と中国本土でレストラン事業を手広く展開する美心(マキシム)グループが代理店となって手がけている。その美心の創業者の娘(株主ではない)が、中国政府を支持する発言をしたがために、系列の中華レストランや、パン屋の「マキシム」、回転寿司チェーンの「元気寿司」やスタバが、ことごとく攻撃の対象にさらされるようになった。当初は、嫌がらせ的な営業妨害だったが、最近では窓ガラスを割ったり、イタズラ書きをしたり、椅子をひっくり返したりと、エスカレートしている。

 

そんなわけで家の近所の「元気寿司」もスタバも、いつもなら午後10時ごろまでやっているが、最近は早々と閉めている(冒頭の写真は10月4日午後6時55分撮影)。パン屋のマキシムは、ガラスが割られないように昼間から、外側に分厚い板を取り付けて防護するなど、神経をとがらせている。

 

f:id:hongkong2019:20191013020711j:image

(入り口以外を白い板で覆ったマキシムのパン屋)

 

狙われているのは、美心グループだけではない。オーナーが中華組織の要職を務める牛丼チェーンの「吉野家」や、お菓子の量販店の「優品360°」、中国銀行のATMなども攻撃対象となって壊されている。

f:id:hongkong2019:20191013030321j:image

(SNSで日本語で流れる情報)


f:id:hongkong2019:20191013030349j:image

(SNSで日本語で流れる情報)

 

一方、デモ隊と友好的な関係にある台湾が中華民国の建国を祝った「双十節」の10月10日は、香港内の台湾系のお店の消費をサポートするよう呼びかけていた。

f:id:hongkong2019:20191013030636j:image

(在港台湾系のお店の消費を呼びかけたりしているポスター)

 

デモ隊は、むやみに破壊行為を繰り返しているのではない。企業の経営者の背景やネットワーク、発言などをしっかり調べた上で破壊活動に及んでいる。表立ったリーダーはいないが、裏側では情報の収集や分析をする精鋭部隊がいると考えるのが妥当だろう。

 

それにしても、だ。今日私が入ったスタバの突然の閉店然り。香港政府が「覆面禁止法」を施行すると発表した10月4日を境に、デモ隊の抗議活動は事前に把握できないことが多くなってきた。10日も急に午後6時からチムシャツイなどでの抗議集会が呼びかけられ、集会場に近い私のオフィスは急遽4時には帰宅していいことになった。市民生活や経済活動にも大きく影響するようになってきたと実感する。

 

 

#覆面禁止法#香港デモ#スタバ#美心#メイサム#優品360°