香港時間 - Hong Kong Time -

香港の今を、日常から、写真と文で読み解きます

瓦解する香港

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10月4日は残り1時間を切ったが、香港瓦解の暗黒の歴史の1ページを作った日となった。(冒頭の写真はCATV画面から)


午後3時、林鄭月娥・行政長官の記者会見に多くの市民が注目した。林鄭長官の口から出てきた言葉は、自らの権権限を行使して、議会の審議を通さずに、「禁蒙面法(覆面禁止法)」を制定し、5日の午前0時から施行するというものだった。4日を境に、デモ参加者はマスクなどで顔を覆う行為が禁じられ、違反した場合は最高で禁錮1年と2万5000香港ドル(約34万円)の罰金刑が科せられる。

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(適用範囲:3人以上の違法な集会、暴動、50人以上の集会(合法、違法とも)、30人以上のデモ行進(合法、違法とも) CATVより)

 

林鄭長官が使ったのは、香港が緊急事態などに陥った際、行政長官に大きな権限を集中させる「緊急状況規則条例(緊急法)」。これを発動して覆面禁止法を制定した。こうすることで、摘発を逃れるためにマスクなどで顔を隠している過激なデモ隊に対する抑制効果になるとみている。緊急法の発動は1967年の暴動以来で、香港が1997年に中国に返還されてから初めてだ。


施行日時を発表から9時間後の5日午前0時としたのは、明日からの3連休を前に、警察とデモ隊の一層の衝突やデモ隊の過度な破壊行為を回避したい狙いがあったのだと思う。


今晩は、マスク着用が違法ではない最後の抗議デモとあって、6月からのデモで一番危険な夜を迎える可能性が大きい。小売店は早々と店じまいし、企業も社員に早めの退社を促した。大きなショッピングモールは、夕方には閉鎖し、デモ隊の侵入を防ぐ措置を取っていた。一方、スーパーは、非常事態に備えて食料品を買い込む客で混雑していた。どこもかしこも、まるで、迫り来る嵐に備えるかのようだった。

 

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売店は早々と閉店(チムシャツイ)


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バス待ちの市民の長い行列(チムシャツイ・ネーザンロード)


いつもなら多くの買い物客で賑わうはずの繁華街は死んだようにシャッターがしまり、市民が足早に移動していた。まさに非常事態だ。

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店は閉まり足早に帰途につく市民(セントラル・IFC)


そして、これを書いている午後10時49分現在。各地でデモ活動が行われ、放火で激しく炎上している。地下鉄駅構内はメチャクチャに破壊されている。14歳の男の子が実弾を太ももに受けたらしいというニュースもある。地下鉄は全面的に停止した。列車の車両に火がつけられた。九龍バスは一部停止した。私の家の外では警察車のサイレンが鳴り響く。


目の前で、香港が瓦解して行く。香港はこれまで、法治と自由放任主義のもとで、香港市民が切磋琢磨し、力強く発展していった。それが、この「逃亡犯条例改正案」をキッカケに社会が大きく真っ二つに分かれ、破壊と無秩序な争いがエスカレートしている。政府は法治や対話より権限を行使してデモ隊の押さえ込みにかかってきた。香港はこのまま落ちて行くのだろうか?法治と自由が生んだ、寛容で多様性に富む魅力的なあの街は、もう戻ってこないのだろうか?