香港時間 - Hong Kong Time -

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不動産市場、ついに逆回転が始まった

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狂ったように上昇を続けていた香港の不動産市場、とりわけ商業店舗で、ついに逆回転が始まった。中国人観光客の消費を見越して高額テナント料を支払ってまで店舗を確保してきた小売店が、ここに来て契約を更新せず閉店の動きに出ているのだ。さすがにこれまで強気一辺倒だったテナントオーナーも大幅値下げに出ているが、中国人客御用達の化粧品店、宝飾店、薬局の店舗縮小は必至。今後不動産相場がどこまで下がるか注目される。

 

香港の不動産市場はこの10年ほどずっと上昇基調で、もはや庶民が簡単には購入できないレベルまで高騰。若者の社会に対する大きな不満の一つになっている。不動産高騰は中国本土の投資資金が相場を押し上げたことが主因だが、強欲な不動産オーナーは金儲けに走り、契約更新時に当たり前のように2ー3割も値上げするため、単価が安く香港市民の間で人気の飲食店は次々と姿を消した。コンビニが閉店した後に高級ブランド「プラダ」の専門店がオープンするなど、繁華街は本土客の消費を狙ったブランド店、宝飾品や薬局、化粧品店だらけになった。

 

しかし今、繁華街は「歩きやすくなった」と香港人が喜ぶほどガラガラ。スーツケースを引いて歩く本土の買い物客も普通話(標準中国語)も街から消えた。6月から続く「逃亡犯条例改正案」の撤回に関連した抗議デモを避けるためだが、中国人を蔑視する香港人への怒りもある。さらに、人民元が対香港ドルで安くなり、買い物のうまみそのものもないからだ。

 

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(九龍側一番の繁華街・チムシャツイのネーザンロード。観光客の姿をほとんど見かけなくなった)

 

さて、不動産の話しに戻ると、化粧品チェーン店「ササ」が九龍側の一番の繁華街、チムシャツイの一店を8月に閉店した。この店舗は、広さ4000平方フィート。月60万香港ドル(約830万円)で借りていたが、契約を更新しなかった。大家は、同店が8年前に入居した際の月45万香港ドル(約620万円)まで値下げを申し出たが、ササは応じなかった。この場所は今、空き店舗状態だ。九龍側の二番目の繁華街・旺角でも、3年前に月220万香港ドル(約3000万円)で借りた5500平方フィートの店舗を契約更新せずに閉めるという。この2店舗だけで、月260万香港ドル(約3600万円)の家賃負担が軽減される。香港島一の繁華街・銅鑼湾の店舗は、大家側の強い希望もあって、現在の月90万香港ドル(約1200万円)から月68万香港ドル(約900万円)に値下げすることで合意したという。

 

ササのライバル会社「卓悦」でも、チムシャツイの店舗の一つは、テナント料が50%値下げされたそうだ。同エリアの別の店舗では、閉店前の在庫一掃セールを実施中だ。

 

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(「激減」と書かれた階段。今の小売店の惨状を物語る)

 

そのほか、小売店や飲食店は、売り上げ激減を理由に大家に賃貸料の減額交渉をしていることが地元紙で話題になっている。

 

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(観光客に人気で連日長蛇の列だった小籠包で有名な「鼎泰豊」(銅鑼湾店)も待ち客ゼロ)

 

7月の来港客数は前年同月比4.8%減、8月第4週は前年同期比45%減だった。小売店も飲食店も、大陸客という「金の卵」が消えて、悲鳴を上げているが、その店舗を提供している不動産オーナーも負のスパイラルが始まったことに戦々恐々としているはずだ。ただ、不動産高騰で、散々、自身の生活を虐げられてきた市民レベルでは、「どんどん下がれ!」「やっと調整が始まったか!」と思っているのが、今の香港だ。