平和と破壊が混ざった抗議デモー9月15日ー
「警察が許可しなくても、我々はデモをする」
「早めにデモに参加すれば衝突には巻き込まれないから、大丈夫」
先日のお月見で集まった香港人の友人らがこう口にしていた通り、9月15日は、警察の許可が降りなかったにも関わらず多くの市民が集まって、「五大要求 一つも欠けてはならない」「香港を取り戻せ 時代の革命だ」と、声を張り上げて、香港島の中心部をデモ行進した。市民の間で急速に広がったデモ隊のテーマ曲「願栄光帰香港(香港に再び栄光あれ)」を合唱しながら行進する若者らの姿があった。しかし、このデモ、平和的にデモする市民の傍らで破壊や破壊活動の準備も行われるという、これまでとは違う様相だった。
抗議活動は、6月9日の市民100万人による大規模デモからすでに3カ月が経ったが、未だ勢いは衰えていない。当初の要求は、「逃亡犯条例改正案」の撤回一つだったが、デモが長引き、市民の怒りが増幅する中で、4つ増えて5つになった。
1つ目の要求は、9月4日に香港政府が撤回を発表し、ついに勝ち取った。しかし、この間エスカレートしていった警察の暴力的な取り締まりを検証する「独立調査委員会の設置」や、6月12日の市民の抗議デモを「暴動」と位置付けたことへの撤回要求など、残り4つの要求も勝ち取るために抗議活動を続けている。
トラム通りを埋め尽くす市民
印象的だったのは、デモ参加者がよく利用するSNSに、デモ隊のテーマ曲として8月31日にアップされた「願栄光帰香港」を口ずさみながら進む市民の姿だった。これからもこの歌が色々な場面で歌われ、想いを一つにするツールになるのだろう。一方、海外の支持を取り付けようと、米国や英国の国歌を歌い、国旗を振りかざして行進する若者もいた。(海外を味方につけたいのはわかるけど、国歌や国旗を振りかざすのは違和感ある)
沿道で複数の20代の若者と話しをした。彼らは、とりわけ警察を敵視する思いが強い。8月31日に地下鉄太子駅で起きた警察の殴打事件で、デモ市民の「死亡説」が浮上。政府や警察は、「死者はいない」と再三説明しているが、信じるどころか「隠ぺいしている」と、却って不信感や憎悪を募らせている。
事件発生時の監視カメラの録画を一部しか公開しない地下鉄会社も攻撃対象となり、デモ行進の途中にある湾仔駅の出入口の一つは、平和的なデモが行われている傍らで、ガラスや監視カメラが破壊された。(夕方は、別の出入り口前で火が放たれた。金鐘も破壊活動があった) 。これまでは、平和的デモが行われた後に、居残った「勇武派」と言われる急進的な若者らが破壊や衝突を行う、いわば二部構成だった。ところが今回は、極々一部とはいえ、平和的デモの中でも破壊行為が行われたのだ。
「人が消えた たたき殺した」と、8月31日の警察の殴打事件を抗議する書き込みも
そして、レンガやビーズ玉が置かれたバリケードもあった。
平和的なデモが行われている日中から、すでに衝突を想定した用意がされている光景を見たのは初めてだ。警察とデモ隊の衝突は、今後一段とエスカレートしていくと予想される。