香港時間 - Hong Kong Time -

香港の今を、日常から、写真と文で読み解きます

炎舞う“不夜城”と化した香港

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8月31日を契機に、夜になると路上に炎が立ち上がる抗議デモが恒常化している。「武勇派」と言われる急進的な市民が警察署前などに結集して、路上に火をつける行為を繰り返しているのだ。深夜まで及ぶデモ隊と警察の激しい衝突は、昨日(9月7日)で8日間連続となり、破壊行為と衝突エリアは複数の地下鉄駅にも広がっている。そして今日(9月8日)の午後、セントラルで行われた合法的なデモ終了後、過激なデモ隊がセントラルの路上で火をつけ、セントラル駅を破壊。夜を待たずに警察との衝突が始まった。デモは混迷の度合いを深め、ついに市民生活を脅かす状況になってきた。

 

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(CATVニュース画面)


日中は普段どおりの生活や経済活動をしているが、夜になると街に火の手が上がり、デモ隊と警察が激しく衝突するーーこれが、8月31日以降の香港だ。


デモが変質した8月31日は、因縁の日だ。5年前のこの日は、民主派市民にとって失望と怒りの日だった。中国政府が、2017年の行政長官選挙は親中派の候補者の中から選ぶという選出方法を発表。市民自身がトップを選ぶ『普通選挙』が阻まれたからだ。そしてこれが、普通選挙実現を訴えて道路を占拠する「雨傘運動」へと発展していった。

 

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(8月31日に掲げられた横断幕)


「逃亡犯条例改正案」の撤回に湧く今年は、デモ主催団体が、5年前のこの決定も合わせて抗議する大規模デモを31日に計画した。しかし、警察は許可しなかった。このため、市民は「買い物」とか、「(許可なく活動ができる)宗教活動」などと理由をつけてデモ行進した。その後も居残った「武勇派」が香港のあちこちで火炎瓶を投げたり、道路に火をつけたり、地下鉄駅構内を破壊したりする過激な行為へとエスカレートさせた。そしてこれがその後も毎夜繰り返されるようになったのだ。

 

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(地下鉄太子駅入り口の壁に書き殴られた抗議のメッセージ)


香港政府は9月4日になって、「逃亡犯条例改正案」の撤回を発表したが、多くの市民は警察の武力行為を検証する「独立調査委員会」の設置など、他の要求に応えていないとして、反発。加えて、8月31日に旺角警察署近くの地下鉄太子駅に逃げ込んで、警察と衝突したデモ市民の“死亡説”がネット上で出回り、怒りの矛先が警察だけでなく、警察に協力した地下鉄運営会社、MTRCにも向かいだしたのだ。

 

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(壊されて利用できなくなった券売機)

 

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7日に旺角駅と油麻地駅に行ってみると、一部の券売機や改札機がメチャメチャに壊されたままだった。駅入り口のガラスも壊されて吹き抜け状態だ。構内に警官が配備され、異様なムードが漂っていた。

 

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(壊されて使えなくなった改札機)

 

ひとたびデモが始まると、デモ隊が集まる最寄り駅は閉鎖されたり、列車も停車しない措置が取られるなど、市民生活への影響も顕著になってきた。事態は複雑化し、混迷が深まるばかりだ。