香港時間 - Hong Kong Time -

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香港メディア、報道姿勢の転換?

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昨日(9月16日)午後10時、1990年から天安門事件の追悼集会を主催して香港の歴史に30年以上関わってきた民主派団体が、事実上幕引きした。香港警察が香港国家安全維持法(国安法)に基づき、事件当時の写真や犠牲者遺族の証言、追悼集会の映像などの資料を大量に掲載していたウェブサイトの閉鎖を要求。これに応じたのだ(冒頭の写真)。

 

団体の名は「香港市民愛国民主運動支援連合会(支連会)」。1989年5月に中国の民主化運動を応援する目的で発足。事件は中国本土では封印されているが、香港では、中国に返還後も毎年、支連会が主催して犠牲者の追悼と中国の民主化を訴えて毎年6月4日に集会を行ってきた。

 

支連会はフェイスブックやユーチューブ、インスタグラムなどのアカウントも閉鎖した。

 

ついにこういう日が来たかとは思ったが、これ自体はあまり驚かなかった。私がガッカリしたのはこのニュースを伝えたメディアの姿勢だ。

 

かつては、この追悼集会の様子をこぞって一面で伝えてきたこともあるメディアが、社説がないどころか、閉鎖の事実だけしか伝えない。

 

まがりなりにも、90年から2019年までの30年間、同じ場所で同じ時間から犠牲者の追悼と民主化への祈りを捧げる集会を主催してきた団体の情報サイトだ。事件当時の生々しい映像や関係者の証言もさることながら、香港の追悼集会の歩みも市民の確かな足取りもある。メディアが果たしてきた役割も少なくなかったはずだ。それらが封印され、今後は政府の発表資料だけが歴史的資料となって後世に伝わっていくのだ。(一部市民の手元や海外に行けば見れるだろうが) 団体を美化するのではなく、功罪を考える一助となる記事を期待した読者はいるはずだと思うのだが。

 

主要紙で一番紙面をさいたのは「明報」だが、その「明報」も学者のコメントを入れるのが精一杯だったようだ。「リンゴ日報」がなくなって、メディアの姿勢がものすごく収縮している。書かない訳にはいかないが、余計な波風は立てたくない感が満載されていると思うのは私だけか?

 

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「明報」

 

支連会の幹部は、2020年にコロナ禍で集会が禁じられていたにも関わらず追悼集会を実施したことで禁錮刑になったり、国家転覆罪の容疑で起訴されている。団体は25日、残ったメンバーで解散を議題にした会議を開くという。仮に解散が決まったら、各紙はどんな記事を書くのだろう。今回のようにまた淡々とその事実だけを伝えるのだろうか?

 

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「文匯報」


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「大公報」


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「信報」


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「星島日報」


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「東方日報」

(新聞はいずれも9月17日付)