香港時間 - Hong Kong Time -

香港の今を、日常から、写真と文で読み解きます

香港人の心の拠り所、獅子山に登ってきた

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11月7日、九龍半島の中心部に位置する獅子山(Lion Rock)に初めて、登った。この山、日本人なら富士山がそうであるように、香港人にとって心の拠り所といえる山だ。

 

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 (この位置からだと、前方を向いているライオンの斜め横顔に見える岩山)

 

標高は495メートル。ライオンが横たわっているように見えるため、こう名付けられた。英語名がライオン・ロックと言われるだけあって、山頂近くは険しい岩山だ。

 

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そしてこの山にちなんで「獅子山精神」という言葉があるほど、香港人にとって特別な山だ。香港がまだ貧しかった1970年ー1988年、懸命に生きる市民生活の実話をベースに、ドキュメンタリー仕立てにした「獅子山下」というテレビ番組があり、「獅子山のもと、苦しくてもみんなで一緒に努力して、頑張っていこう」という精神が、主題歌と共に啓蒙され、受け継がれてきた。困難を克服して、豊かさに向かって邁進していく香港人の精神であり、獅子山はそのシンボルであるのだ。

 

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番組はその後も不定期だが続編が放送され、香港社会や市民生活などの世相を切り取っている。

 

主題歌「獅子山下」は今も香港人の間で愛されている。2002年に政府が予算案を発表する時に、当時の財政局長が歌詞を引用して、皆で一つになって苦境を乗り切ろうと呼びかけたこともある。(1997年のアジア通貨危機以降、香港は景気低迷が続いていた)

 

民主派市民がここ数年、この獅子山精神と民主化運動を重ねて、「我要普選(普通選挙が必要だ)」といった政治的スローガンを書いた横断幕を獅子山のライオンの頭の位置に掲げ、政府が直ちに撤去するーーといった出来事も続いていた。

 

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私は今回初めて登った。わずか5キロほどの距離だが、石段を延々と上った後、山頂目指して岩山を登るから、思ったよりもキツかった。滑落事故が多いことも納得した。

 


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山頂や尾根づたいからの眺めは、高層ビルや海、離島、大橋など、「香港」を広範囲で俯瞰でき、絶景だった。獅子は、小さな漁村が、今日の姿に変貌していく風景と、力強く時代を駆け抜けてきた香港人の姿を、どっしり構えて見守ってきたわけだ。

 


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獅子のオーラが風となり、下界に向かって「(良い)気」を吹き込んでいるかのようだった。ビックリだったのは、山頂も尾根もとにかく蜂が多かったこと。蜂対策をして、またこの絶景を味わいにやってきて、沢山のパワーをもらいたい。