香港時間 - Hong Kong Time -

香港の今を、日常から、写真と文で読み解きます

催涙弾とはこういうものかー。

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前日から緊張が走る8月31日。それでも日中は混乱もなく、私は午後5時過ぎに香港島・セントラルで仕事を終え、最寄りの地下鉄・金鐘駅に向かって歩いていた。金鐘にさしかかった時に「なんかおかしい。なんだろう? 」と思った。目が痛い。鼻は息を吸うたびに何かツンとくるし、喉もイガイガしだして変だ。そして、察した。知らない間に催涙弾を浴びていたのだ。

 

辺りは多くの市民が「歩いて」いた。と言っても、「逃亡犯条例」の改正案を反対するデモ行進だが、デモが警察に許可されなかったから、「町歩き」とか、「(警察の許可がいらない)宗教活動」などと各々理由をつけて、抗議デモをしていたのだ。彼らは平和的だったし、私とは逆方向の上環方向に向かって歩いていた。今日の危険エリアは、彼らが向かっているその先にある中国政府の出先機関「駐香港特別行政区連絡弁公室(中連弁)」だろう。そう思って油断していたのがまずかった。

 

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私の前方では、男性が女性に目を洗ってもらっている。「まさか⁈」と思い、この女性に聞いた。

      「ひょっとして催涙弾?」

       「そうよ」

       「え!どこで?」

       「前方よ」

 

しかし、前方を見ても警察もヘルメットを被ったデモ隊の姿もない。催涙弾は相当遠くにいる人まで影響するとの話は本当だったのだ。私は、マスクは携帯していたが、していなかった。

 

     「だから、私も目が痛いのね。鼻や喉も」

     「洗浄してあげる。上を向いて。

         鼻と喉は水を沢山飲むといいわよ」

 

洗浄液はすぐに効いた。彼女がどういう素性かは聞かなかったが、とても優しかった。

 

金鐘駅に行くのはやめて、もと来た道を急いで引き返し、セントラル駅から地下鉄に乗って帰宅した。この間、露出していた腕の皮膚もかゆみが出てきた。これも噂に聞いていた、催涙弾の影響の一つだ。

 

帰宅してニュースを見たら、私が歩いていた道路の一本海側にある立法会(議会)付近で警察が繰り返し催涙弾を使ってデモ隊の排除に乗り出していると報じていた。時間的に私が浴びたのは、最初の頃だ。しかも、距離にしたら400メートルぐらい離れていたと思う。それでもこんなに感じるものなのかー。

 

装備はしているとはいえ、毎回大量の催涙弾を浴びながらも取材を続けているメディアの方々は本当にご苦労様と言いたい。

 

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夜となり、「玉砕」覚悟の過激分子が火炎瓶を投げたり、道路に火をつけたり、派手に暴れている。今日は香港にとって、とても長い暗黒の夜になりそうだ。そして、その先にある香港の行く末もー。