香港時間 - Hong Kong Time -

香港の今を、日常から、写真と文で読み解きます

2021年7月1日ー返還記念よりも結党記念


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1997年に香港が中国に返還されて以降、7月1日といえば、返還式典が行われた「エキジビジョンセンター」の脇にある広場で朝8時に国旗が掲揚されて、その後、同センター内で行われる祝賀式典で行政長官が香港の現状や未来への抱負などを喋っていた。その数時間後の午後、市民が香港島の主要道路で「7・1民主化デモ」が毎年行われていた。一時、香港と中国が蜜月の頃は、民主派デモと同じルートを、午前中に親中派が祝賀パレードをしていた。

 

ちなみに日本のメディアは、民主派デモがあたかも2003年の「国家安全条例」の法制化に反対した50万人デモから始まったかのように書いているが、返還した97年7月1日から、行っている。

 

昨年は、コロナ禍を理由に「7・1デモ」は許可されなかったが、「香港国家安全維持法(国安法)」が前日に施行されたこともあって、違法と知りつつ若者らが香港島のSOGO周辺に集まって抗議の声をあげてデモは行われた。(逮捕者も大勢出た)

 

では、返還24周年の今年はどうだったか?

 

香港は、返還24周年記念よりも、中国共産党結党100年を祝っていた。


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(共産党結党100年を祝う垂れ幕)

 

テレビは香港の返還記念式典の様子はサブ画面で、天安門広場の結党100年の式典をメーン画面で放映。行政長官はじめ重鎮は北京へ。香港は、1週間前に政務長官に昇格した李家超氏が行政長官代理に。

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(TVBニュースチャンネル。メーンは天安門広場の式典。サブが香港)

 

新聞も12紙全て1面は、政府が買い取って、共産党結党100年と返還24周年を祝う全面広告。

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(英字紙「サウス・チャイナ・モーニングポスト」)


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(写真は「明報」だが、中文紙は全部この1面広告)

 

国旗掲揚は、初めて普通話(標準中国語)で。私も1時間ほど習近平国歌主席の講話を聴きながら式典の様子をライブでみていた--と言った具合。

 

毎年デモのスタートポイントだったビクトリア公園は、返還後初めて、警察によって正午ごろに封鎖された。ネットで午後3時から抗議デモを呼びかける動きがあったとかで、ビクトリア公園に近いSOGO前も昼過ぎから一部封鎖状態。スピーカーホンで、滞留を禁じる放送を流し続けていた。

 

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(返還後初めて7月1日に封鎖されたビクトリア公園)

 

こんなところに長居は無用と九龍側に行く。途中で、国安法施行1年を祝ったり、共産党結党100年を祝うメッセージを載せたバスやら、巨大看板などを見た。もうここまで来ると、市民に目を向けず、ひたすら中国に媚を売っているとしか思えない光景だった。

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(国安法施行1周年を祝う2階建バス)

 

強烈だったのは、共産党の旗を香港で初めて見たことだ。そして毛沢東を扱った劇の巨大な広告看板。ついにこういう時代になったのかーーー。

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夜テレビを見たら、警官(28)が倒れている様子が流れていた。背後から暴漢に刃物で切りつけられたと放送していた。その後の結末はーー。警官は一命をとり止めたが、襲った男性(50)はその場で自殺した。

 

追加のニュースはしばらく出てこなかった。2日の朝のニュースで、犯人は単独テロと警察が発表していた。遺書らしきものも自宅のPCから見つかったとか。事件後、花束をもって死者を追悼しに来る市民がいる。警察はその花束を取り去り、献花した市民の身元チェックが入る。警官は警備の際は防護服を身に付けて4人で組むという。

 

7月3日のニュースを見ていると、政府や公安は、テロリストを美化するべきでない、と強調している。政府や警察を支持する声明を出す団体も複数ある。

 

返還25年目に入った初日から、なんともやり切れない思いだ。社会の分裂が一層深まらないことを望みたい。