香港時間 - Hong Kong Time -

香港の今を、日常から、写真と文で読み解きます

返還後最大の激震、全人代で香港国家安全法を審議へ

f:id:hongkong2019:20200523025202j:image

 

新型コロナウイルスが鎮静化し、鳴りを潜めていた若者らがショッピングモールなどで政府への抗議活動再開に動き出したと思ったら、そんな彼らの息の根を止めるような強硬かつ強権的な策が中国政府から飛び出した。


22日、中国で開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、国家安全法を香港に導入する案が審議されることになったのだ。


早い話が、本来は国家の安全のために香港政府がやるべきことが一向にできないから、上の立場にある中国政府が自ら香港の“治安”に手出しできるようにしてしまおうというもの。

 

香港政府は本来、「基本法(香港の憲法に相当)」に基づき国家分裂や政権転覆の動きを禁じる「国家安全条例」を制定しなければならない。ところが、自由を尊ぶ市民らによる猛反発に幾度と遭い、一向に成立しない。(香港よりも2年遅れて中国に返還したマカオでは2009年にすでに成立している) それどころか、香港が中国に返還されてからまもなく23年になろうというのに、昨年は政府に不満を持つ若者らが過激な抗議デモや破壊活動を繰り返した。「香港独立」を叫び国旗や国璋を汚すデモ隊まで出てきたのだ。

 

国家を侮辱する行為など到底受け入れられるはずがない中国政府が、それでもグッと堪えたのは、策を練りつつ、来るべき好機を待っていたのだろう。で、新型コロナウイルスの登場で、昨夏から半年以上続いた反政府デモが鎮静化すると、この機に乗じて一気に反転攻勢に出たというわけだ。しかもそのインパクトたるや、香港市民にとっては空から爆弾を落とされたようなもの。それぐらい威力のある一発が投下され、香港に衝撃が走った。

 

f:id:hongkong2019:20200523031214j:image

f:id:hongkong2019:20200523124247j:image

(香港政府高官をズラリと背後に率いて、「中央政府の法案に基づき対応していく。『一国二制度』は揺るぎない」と会見する林鄭行政長官。上の写真は無線新聞台の画面から。下の写真はCATVのニュース画面から)


法案が通過すれば、香港に中国の国家の安全を守る機関が設立されることになる。国家転覆行為とみなされる行為は厳しく取り締まられるようになるのではないか。「一国二制度」で保障される人権や自由が制限される恐れもある。返還後最大の激震といえる動きだろう。


毎年6月4日に実施される、1989年の天安門事件の犠牲者を追悼する「6・4集会」は、新型コロナの感染防止を口実に、体よく阻止された。今後も新型コロナや、中国政府が制定するこの新たな法案によって、さまざまな反政府的なデモが阻止されるのではないかとの懸念や不安が渦巻いている。反発する市民が抗議活動に乗り出すかもしれず、市民は、新型コロナの時とはまた違った緊張感の中で過ごすことになりそうだ。

f:id:hongkong2019:20200523031049j:image

(22日の香港株式市場は、香港版国家安全法が審議されるとのニュースが嫌気され、ハンセン指数は前日終値から1000ポイント以上下げた)

終値: 22,930.14  −1,349.89 (5.56%)

始値 23,756.91
高値 23,756.91
安値 22,878.26

 

冒頭の写真は、CATVニュースの画面から


#香港 #国家安全法 #全人代 #香港デモ #天安門事件追悼集会