今年の11月11日。中国本土は今後も内需経済の拡大を感じさせる一日となり、香港は民主派議員の排除で政治的統制がますます強まると感じさせる、対照的な日だった。これもまた、「一国二制度」という異なる制度のもとでの一コマと言えるので、中国本土と香港を別々に書き留めておく。
(冒頭の写真は11月12日付「東方日報」)
↓中国本土編
https://hongkong2019.hatenablog.com/entry/2020/11/22/084233
香港の11月11日は、一連の政治的出来事に重苦しい空気が漂っていた。中国の全人代(全国人民代表大会)が、香港の立法会(議会)議員が香港独立を擁護したり、外国勢力の介入を求めたりしたら、直ちに議員資格を剥奪できるよう決定したことを受けて、香港政府が民主派議員4人の議員資格を即日、失効させた。これに抗議する民主派議員15人が集団辞職を表明。民主派議員2名に対して、建制派(親中派)が41議席となった一日だった。
集団辞職に伴う補欠選挙は実施されないから、来年の立法会選挙までは、建制派の圧倒的多数の中で議会が進む。これまでは民主派議員の抵抗にあって、なかなか審議が進まなかった案件は、一気に進むようになるだろう。しかも政府は、法制度を都合のいいように変えやすくなる。その先にあるのはおそらく、昨年の反政府デモで問題点が浮き彫りになった、教育制度や最高裁の裁判官任命制度などの改革だろう。
(「全人代の決定を支持し、議会を混乱させる議員を追い出そう」の横断幕)
それにしてもー。民主派議員の抗議の方法はこれしかなかったのか? 新型コロナを理由に抗議デモが禁じられているのに、議会で声を発する議員までいなくなってしまい、民主派市民は外堀を埋められた状態だ。しかも過去のケースを見れば、今回辞職表明した議員たちは、全人代の決定に反対したと解釈されかねず、次の選挙への出馬は認められない可能性が大きいだろう(香港政府は、その時の選挙管理委員会が決めることと言っているけど)。
(全人代の決定を支持する市民の街頭署名活動)
香港の政治体制は変わった。反体制派を取り締まる「国家安全維持法」の法制化に続き、今回の議員資格の定義付けも中国政府主導だ。中国政府高官が香港のマツリゴトに物申すことが実に増えたし、諸外国からの対香港批判を平然と「内政干渉」と跳ね返す。それほど対外的に国力をつけたといえるだろう。これまでは中国政府と香港市民の狭間で何もできずにいた香港政府が、「国安法」をきっかけに、中国政府の意向に沿った高圧的な態度を市民に取るように変わった。民主活動家は、発言するどころか、過去の行為で逮捕されるケースが相次いでいる。
民主派議員の排除で加速する統制強化に、未来を悲観し、無力感を味わう民主派市民は少なくない。しかしその一方で、この政治的波乱があった後の週末、銅鑼湾では全人代の決定に賛同する市民の署名活動が行われ、サインする市民の姿もあった。政府支持派と民主派の比率がどれくらいなのかは不明だが、社会が分断した今の香港の姿はハッキリと見て取れる。
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以下、11月12日付主要香港紙の一面(「明報」と「星島日報」は一面が広告なので、二面)
「蘋果日報」
「明報」
「東方日報」
「星島日報」
「大公報」一面と最終面の見開き
「文匯報」