香港時間 - Hong Kong Time -

香港の今を、日常から、写真と文で読み解きます

デモ、「加油」から「反抗」へ

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6月に大規模デモが始まってからずっと叫ばれて来た「香港人 加油(香港人 頑張れ!)」のスローガンが、10月4日を境に「香港人 反抗(香港人は反抗する)」に変わった。きっかけは、林鄭月娥行政長官が、行政長官の権限を行使して、抗議デモでマスクなどで顔を覆うことを禁じる「禁蒙面法(覆面禁止法)」を施行すると発表したこと。この措置にデモ隊が反発し、この日から「香港人反抗!」と叫んで抗議活動をエスカレート。地下鉄駅や中資系の商店、関係者がデモに異を唱えたレストランなどを破壊したり、路上に火を放ったりと、破壊活動を激化させるようになった。そして、抗議のメッセージやポスターが張り付けられた「レノンの壁」は、今や「反抗」「反抗」「反抗」と、「反抗」の文字の嵐だ。

 

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(「香港人は反抗する 10月20日街で会おう!」と書かれた張り紙。場所:香港島・炮台山、1枚目は九龍・黄大仙)

 

香港人の友人曰く、「6月以降大小様々なデモを繰り返し、我々がこれだけ“頑張って”政府に訴えても、政府は『逃亡犯条例改正案』を撤回すると宣言した後は、我々の声に耳を傾けない。それどころか、『覆面禁止法』を出してきた。こうなったらもう、“反抗する”しかない」というメッセージなのだそうだ。

 

「覆面禁止法」は、香港が緊急事態などに陥った際、行政長官に大きな権限を集中させる「緊急状況規則条例(緊急法)」を林鄭長官が発動して、立法会(議会)を通さずに制定した。摘発を逃れるためにマスクなどで顔を隠している過激なデモ隊に対する抑制効果を狙ったものだが、結果は、見事裏目に出た。

 

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(九龍・葵芳)

 

「マスクをしないでデモをして簡単に捕まるぐらいなら、マスクをして、捕まるまで抗議活動をした方がいい」と、却って、デモ隊の怒りの火に油を注いでしまった。彼らは、4日夜から7日までの週末と祝日に各地で暴れまくった。その結果、地下鉄は5日は全線運休に追い込まれ、全線が復旧したのは11日だった。(ただし、今も運行時間は短縮されていて、午後10時に地下鉄駅の改札は全て閉鎖され、移動は制限されている)

 

市民が「反抗する」と、態度を硬化させて警戒しているのは、「覆面禁止法」の先にあるものだ。今後も政府は「緊急法」を行使して、戒厳令や財産の没収、国家転覆活動などを防止するための「国家安全法(23条)」の法制化などに踏み切るのではないかと心配する香港市民もいる。

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(九龍・葵芳)

 

明日(10月20日)は、許可が下りなかったデモ行進が、九龍・チムシャツイ地区で行われる。このデモを申請していた団体「民陣」は、過去に200万人の市民が参加して平和的なデモを実施してきた団体だが、16日にはリーダーが何者かに襲撃されて負傷した。民陣としてはデモは取り消すと発表したが、副リーダーらは19日、「個人の身分で予定通りデモを実施する」と宣言している。各地の「レノンの壁」などには、デモへの参加を呼び掛けるさまざまなポスターが貼り付けられ、デモ行進の終点となる高速鉄道・西九龍駅ではデモ隊の侵入を阻止する措置がとられている。

 

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(香港島・炮台山)

 

デモの規模は小さくなってきているが、デモ参加者のスタンスが「頑張ろう」から「反抗する」に硬化したことで、今後も過激な破壊活動が繰り返されかねない。デモの収束は遠のくばかりだ。

 

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(九龍・葵芳)

 

#香港デモ #逃亡犯条例改正案