香港時間 - Hong Kong Time -

香港の今を、日常から、写真と文で読み解きます

さよなら キャセイ・ドラゴン航空

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衝撃的なニュースだった。香港のフラッグシップ、キャセイ・パシフィック航空が、グループで大規模なリストラと再編を行い、グループ全体の約24%にあたる約8500人の従業員の解雇と、傘下のキャセイ・ドラゴン航空の即日運行停止とブランド消滅に踏み切るとは。

 

キャセイが大規模リストラを行う噂は2ー3日前からニュースになっていた。10月21日に解雇を言い渡された約8500人のうち約5300人は、香港のキャセイ航空(パイロット約100人、客室乗務員約2000人)とキャセイ・ドラゴン航空(パイロット約500人、客室乗務員約2000人)の従業員、それとバックオフィスの700人。大多数が即日解雇だった。

 

「こうするしかなかった」ーー。同社幹部は21日の記者会見でこう言って、苦渋の決断だったことを明らかにした。同社によると、世界的なコロナ禍で業績が急速に悪化。グループで毎月15億ー20億香港ドル(約202億ー270億円)の資金流出が続いた。今回の措置で、今後は資金流出を月5億香港ドル(約67億円)に抑えられるという。

 

香港史上最大規模と言われるこのリストラは、当事者だけでなく、香港市民に大きな衝撃を与えている。それは、香港の失業率に0.2%影響するというだけでなく、35年の歴史を持つドラゴン航空のブランドを棄てて、2019年3月に買収したLCC(格安航空)の香港エクスプレスを存続させることにしたことだ。

 

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(CATVニュースより)

 

キャセイ・ドラゴン航空は、もともとはドラゴン航空として、1985年に華人資本によって誕生した香港の航空会社だ。英資本のキャセイのライバルとして誕生したが、後にキャセイが資本参加。その後も再編を経て、2006年にキャセイの完全子会社になる。2016年には社名もキャセイ・ドラゴン航空になった。中国本土の都市をメーンに、日韓台湾など約40都市と香港を結んでいた。

 

日本や台湾に行くときには私も利用していたから、発表と同時に、あのドラゴンマークの飛行機が消滅してしまったのは寂しい。呆気なさすぎる。

 

キャセイ・ドラゴンの運航権は、香港政府に返上され、今後、キャセイと香港エクスプレスが、返上されたこの運航権の獲得に乗り出す予定だ。(香港航空も名乗りを上げるのだろうか?)

 

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(間もなく閉鎖されるカイタック空港に向かって舞い降りようとする飛行機(キャセイ航空)と空港に、別れを惜しんでやってきた市民について説明する写真)

 

解雇に話を戻すと、さすがにキャセイだけあって、解雇保障金は、通常より手厚くなっている。ただ、残った従業員も、2021年1月から新たな雇用契約のもとで仕事をすることになる。給料は14%-36%減額され、状況次第で、無給休暇や追加の減給もありうるというから、残った社員も厳しい待遇が待っている。

 

航空業界に詳しい学者は、大規模リストラを行わなければ、キャセイは倒産の可能性があったとしている。それにしても、感染が騒がれ始めてからまだ一年も経たないというのに、これほど航空業界を一変させてしまった新型コロナウイルスのその破壊力たるや、恐ろしい。

 

*冒頭の写真は、RTHKニュースから