香港時間 - Hong Kong Time -

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「蘋果日報」の発行部数は約8倍、株価は大暴騰

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昨日、香港国家安全維持法(国安法)に違反した疑いで創業者や幹部が逮捕された、民主派大衆紙蘋果日報(アップル・デイリー)」などを発行する壱伝媒(ネクスト・デジタル)。一夜開けた8月11日の新聞や同社の株価はどうだったかというとーー。

 

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(自宅近くのコンビニの新聞コーナー。蘋果日報は棚だけでなく床にも積み上げられていた)

 

朝、いつものようにコンビニに新聞を買いに行くと、ちゃんと蘋果日報が売られている。頑張って発行したんだ!と思ったら、いつもの棚に入りきれない蘋果日報が床に積み上がっていた。

 

レジでは私の前で、蘋果日報ばかりをドッサリ買い込んでいる男性がいる。コンビニの店員さんが「---18、19、20。20部ね」と言いながら清算している。男性は、「もっと買う」と言って、ひとまず20部分の代金を払った後、また新聞コーナーに行きゴソッと蘋果日報をつかんだ。思わず「応援しているのね?」と言う私の方をチラッと見たが、何も言わなかった。「知らない奴に、心の内を話せるか!」とでも言いたげだった。

 

一昔前前だったら「そうだよ」とか「違うよ」とか一言ぐらい返事が返ってきそうだが、今は違う。無闇やたらと下手なことは口にしない、そんな空気が街の中に流れている。それを改めて実感した瞬間だった。

 

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(この新聞スタンドも蘋果日報を積み上げて売っていた)

 

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(蘋果日報を買い求めたり、手にして出勤する市民)


どこでも山積みの蘋果日報。こういう時こそ大量に印刷するネクスト社に、言論の自由に訴えかけるメディア魂と、稼ぐぞ!という意気込みを感じた。新聞の一面を使って「打圧を恐れない」と訴えてもいた。


通常、1日7万部を印刷しているところ、今日は5倍の35万部を刷ったというニュースを見たが、その後更に増刷して、55万部を用意したという。権力に屈しない姿勢は、蘋果日報らしい。

 

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(55万部まで増刷したことを伝える蘋果日報のサイト)


会社近くの新聞スタンドにも立ち寄ってみた。出勤前の市民が一人、また一人と蘋果日報を買っていった。スタンドの山が無くなってくると、そばの柱脇に山積みになっている蘋果日報を店員がゴッソリと運んできて、スタンドに積み上げる。その繰り返しだった。夕方通りかかったら、朝方は渦高く積まれていたあの新聞の山はもちろん、売り場にも、蘋果日報はなかった。

 

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(新聞スタンドに置かれるのを待つ蘋果日報の山)

 

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(朝から、早くも蘋果日報の棚だけは空っぽになるコンビニも)

 


一方、壱伝媒(ネクスト・デジタル、株式コード282)の株価。今日は、昨日以上に大暴騰した。ネクスト社を応援したいという一般投資家と、そんな特需に便乗して設けようという一般投資家があいまってのことだろう。

 

終わってみれば、前日終値より331%、0.845香港ドル高の1.10香港ドルだった。これまでのようにストレートに抗議の声をあげられない市民の叫びが株価に込められているような、そんな迫力さえ感じる値動きだ。単価が安いから購入しやすいとはいえ、何か有れば意思表示をせずにはいられない、香港人らしい動きだとも言える。

 

さっき、創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏が保釈の許可が降りたとのニュースが出てきた。今、香港で最も注目を集めている彼の口から、どんな言葉が出てくるのだろうか。

 

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(HKetnet のサイトから)