香港時間 - Hong Kong Time -

香港の今を、日常から、写真と文で読み解きます

元気な香港政府高官、音無しの民主活動家

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5月21日夕方を境に香港の空気がガラリと変わった。

この日から政治や市民生活に関わる話題で、テレビで流れてくるのは香港政府高官と米国のトランプ大統領の発言だ。いつも必ず政府批判の声を上げる民主活動家たちが、パタッとおとなしくなってしまったのだ。

 

キッカケは、翌日(5月22日)から中国で始まる全国人民代表会議(全人代)で、中国政府が直接、香港の治安維持に介入できる「香港版国家安全法」を審議する、という消息筋情報が流れたことだ。これは、多くの香港人にとって、今後の人生を左右しかねない一大事。香港中に衝撃が走った。

 

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(CATVニュースから。「香港版国家安全法」は、“国家転覆”を禁じるもので、香港政府がずっと法制化できずに、中国政府がしびれを切らせた「基本法23条」の国家安全条例よりも、より影響が大きいことを意味する。(23条は、“政府の転覆”を取り締まるもの))

 

この消息筋情報を伝えるテレビニュースで、この日コメントした民主活動家は二人だけだった。多くの民主活動家は相当ビビったようで、その後も、普段は何かにつけて舌鋒鋭く批判、反論するあの議員、この議員、あの活動家などなどなどが、どこかに消えてしまったかのように、静かになったのだ。

 

全人代で審議されるということは、採決を待たずとも採択されるのは明らかだ。(結果、賛成2878、反対1、棄権6。反対に1票を投じた人、勇気あるのか、ボタンを押し間違えちゃったのか)。

 

中国当局は今後数カ月をかけて、政府転覆や分離、テロ、外国の介入などを禁じる法の詳細を策定する。民主活動家たちが音無しになったのは、内容が固まる前に余計な批判をしたくないのだろう。とりわけ外国と繋がっている活動家には非常に分が悪いから。

 

で、逆に急にテレビニュースに登場してくるのが香港政府高官。昨夏以降、メディアから反政府デモに関して質問攻めに合い、時に答えに詰まり、弱腰なコメントもしていた方々とは思えないほど、「香港版国家安全法」に関しては、堂々とじょう舌にコメント。啓蒙普及と認知のための“布教活動”を頑張っている。

 

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(上の写真は全て「RTHK」ニュースから)

 

「国家安全法」は、中国政府の決定事項だし、香港の立法会(議会)を通さずに中国当局が法制定するから、高官たちはその決定に従って忠実に動けばいいだけ。それが高官たちの態度に現れているといえる。

 

中国政府はある時期から、昨夏以降の反政府デモは外国勢力が背後で支援していると言い続けている。これは確たる証拠を掴んだからだろう。制定内容によっては、海外に拠点を移す活動家が出てくるのではないか?

 

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ちなみにー。今日(5月30日)、若者で組織する急進的な民主派組織「デモシスト」が記者会見を開いたが、RTHKやCATVで伝えられているニュースは、彼らの活動方針ではなく、米国の対中制裁措置は1ー2週間以内に明らかになっていくということ。そして、香港は制裁の影響を受けることになるが、多くの国際組織が中国に対して圧力をかけて欲しい、という主旨だった。(つまり彼らは、外国勢力とともに中国政府に対抗していく姿勢を表したもの、と私には見て取れた)

 

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(RTHKニュースから)

 

*冒頭の写真は、CATVニュースから。米トランプ大統領が「一国二制度」は「一国一制度」になったと発言したことを伝えるニュースから。

 

 

#香港 #国家安全法 #香港デモ #米中戦争