マカオのカジノ王、スタンレー・ホー氏が亡くなった。享年98歳。2002年にマカオのカジノ市場が解放されるまで、マカオのカジノ市場を独占し、「カジノ王」の異名で知られた。「ホテル・リスボア」、「スタジオ・シティ」、「MGM」などのカジノや、香港とマカオを結ぶフェリー会社「信徳集団」など、みなホー氏一族が運営している。
奥さんが四人もいて、子供も17人いる。2009年7月に四番目の奥さんの家で転んだ拍子に頭部を打って病院に運ばれてから、結局、ビジネスの一線には戻って来れなかった。倒れた約5ヶ月後に行われた、マカオの中国返還10周年の記念式典には、香港の病院を7時間だけ抜け出して車椅子で出席した。それが、彼が表舞台に出た最後だった。本人はきっと華々しくスピーチしたかったに違いない。きっと無念に思っているだろうな、と思いながら私はテレビを見ていた。
その後、目にしたのはホー氏を引っ張りだこにした骨肉の財産争い。「会社の持ち株を〇〇に譲る」的なことを言ったビデオが流されて、該当しなかった奥さんと子供が反発。騒動が表沙汰になって繰り広げられた(その後、その発言はホワイトボードに書かれた文を読まされた云々で、揉めに揉めていた。そんなこんなであれは確か、無効になった記憶あり)
2年ほど前に正式に一線を退き、運営会社は妻や娘などに配分したようにも見えるが、一族で仲良くやっていけるとも思えず。昨年から臓器も衰え今年1月にはICUに入ったりしていたようだから、遺族らは来たるホー氏のX DAYに備えて、いろいろ計算高く動いていたのいたかもしれない。
香港では、金持ちの親が亡くなると大抵、兄弟で遺産争いが展開される。ましてや四人の奥さんのもとで子供が17人もいて、孫も何人もいるだろうから大変だ。
私が香港に来たばかりの頃、ホー氏は飛ぶ鳥を落とす勢いだった。それだけに、ホー氏にはもっと長く現役でいて声を上げていって欲しかったという思いと、カジノ市場が開放された新生マカオの中で彼はすでに過去の人、という2つの想いがある。そして何より、返還前のマカオの重鎮が去ったことはやっぱり一つの時代の終わりを感じて寂しい。
しかし、残された遺族たちの間で今後どんな事業展開が始まるのだろうか?やっぱり熾烈な遺産相続争いが始まるのだろうか?
写真は全て、香港経済日報のWebサイトから